主人公の味吉陽一は中学生。母と二人で、父が残した大衆食堂「日之出食堂」を営んでいる。日本料理人会のドン、村田源二郎(味皇)と出会ったことがきっかけとなり、味皇の直弟子でイタリア料理部の主任である丸井とミートスパゲティ対決をすることになる。独自の創意工夫で、食通の大人たちをうならせる陽一。

【極!合本シリーズ】 ミスター味っ子1巻
その後も陽一は、町内ラーメンコンテスト、少年料理人とのチキンカレー対決、ステーキコンクール等で活躍。
チキンカレー対決で、相手の子は鶏肉をヨーグルトに漬け込む。今では私も普通にやっていることだけど、この漫画が発表された1980年代に読んでいたら、私には衝撃だっただろうなあと思う。
一方の陽一は、パイナップルの中身をくりぬいたものをカレーの容器にするという斬新さ。中身は捨てずに、食後のデザートにすればよいと思うが。
ステーキコンクールは輸入牛肉販売促進のためのもの。司会者曰く「現在残念ながら 輸入牛肉はその安さの割に あまり食べられておりません」とのこと。今ではスーパーマーケットに行くと、アメリカ産、オーストラリア産など普通に並んでいて、ファミレスの牛肉もたいてい外国産だと思われるが、1980年代は家でも外でも国産が普通だったのだろう。もしかして、昔の食卓の方がいろんな意味で豊かだったのかもしれないなあと思ったり……。
陽一はステーキ肉に脂身を挟むことを思いつくのだが、現在ある牛脂注入肉を、手作業で作っでみたという感じかな? そこまでしなくても、塩こしょうして焼くだけで、どんなものでもおいしいと思うのだが。人間の欲望は果てしない……。
一つ気になったのは、生意気なことを言う年下の子に対して、主人公が「このガキゃ いっぺん殺したろーか」とつぶやくところ。少年漫画でこれはないなあ。主人公がんばれー!と思いながら読んでいたのに、一気に心が寒くなってしまった。
この漫画の雑誌連載が始まったのは1986年とのことだが、この頃、私の食生活が大きく変わったのを覚えている。スパゲッティといえばナポリタンかミートソースだけだったのに、ボンゴレとかたらこ、明太子のスパゲティが登場した。カマンベールチーズやキムチというものを初めて食べたのもこの頃。サーモンの寿司や納豆巻きを初めて食べたのもこの頃かな。食の多様化は面白い反面、なんだか面倒くさいなあとも思う。
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https://koukaitohansei.seesaa.net/article/479167327.html寺沢大介『【極! 合本シリーズ】ミスター味っ子1巻』