1981年5月20日 第40刷発行
大日本図書 97ページ
定価850円
挿絵 吉井 忠
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語り手の家にいる、熊野犬のマヤ、猫のペル、鶏のピピ。そして三人の息子たち。彼らの日常が描かれているのが最初の三分の二。著者の描写が生き生きしていて、目の前に動物たちの姿が現れてくるようです。昭和の時代、それも戦前ともなれば、犬は番犬、猫はねずみとり、鶏は卵生産という役割のために飼われていたのだと私は勝手に思っていましたが、この家庭では動物たちが家族の一員として扱われています。
残りの三分の一は、あまり紹介したくない内容。そもそも、この本の内容は実話なのか、創作なのか、どうなのだろう。巻末にある鳥越信氏の文章には、
この作品に描かれている事件は、おそらくほとんど事実に即したものと考えられます。
とあります。「ほとんど」ということは、「すべて」ではない? すべてが事実ではない方が、私の心は安心できるのですが。
毛皮のために犬を供出させられたという話はどこかで読んだか、あるいは聞いた覚えがありますが、「犬を飼っているのはぜいたくだ」という理由で殺処分されるなんてことが本当にあったのでしょうか。毛皮のため、というのも残酷なことですが、「ぜいたく」とは何なのでしょう。飼い主が自分の食べる分を削って、犬を養っているのかもしれないのに。
息子たちを失い、さらに犬まで失ったオキヌ婆さん(婆さんといっても、おそらく五十歳前後なんだろうなあ……)の話も、私は実話だとは思いたくありません。しかし、世の中には残酷な話がいくらでもありますし、平和な時代にもひどい事件はあるものですし、この話も実際にあったことなのかもしれません。
人間の都合で遠方から送られてきて、人間の都合で殺されたマヤ。人間というのはつくづく恐ろしい生き物です。そしてこの本を読んで涙する人も、牛、豚、鶏を食べることについては何も思わなかったりします。
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